『HONEY TRIP』(城闇本文サンプル) 事の起こりは、在庫が切れそうなトイレットペーパーをまとめ買いした会計で 渡された赤と白の福引券だった。ある金額ごとに渡されるその券は、五枚集め ることで一回のくじが引けるという。ありがちな福引のパターンに城之内は肩 をすくめた。 (中略) 「城之内君! これ金色だぜ!」 遊戯が子どもみたいに金色に輝くそれをつつく。 「これって、一等だよな、城之内君!」 「え・・・あ、ああ」 うなずいた城之内は思わず苦笑した。 こうして城之内の手に、温泉街の無料宿泊券が握られた。 (中略) 福引の景品にされた割にはそこはずいぶんと洒落ていて、意外に得した気分に なった城之内は上機嫌でチェックインする。城之内がカウンターに行っている 間に、遊戯ははじめて見るものに囲まれてそわそわと落ち着かない。好奇心の ままにあたりをきょろきょろと見回した。 「ああ、遊戯。待たせたな」 「城之内君」 後ろに旅館のスタッフを従えて戻ってきた城之内に、遊戯はほっとした笑みを 浮かべた。