『HIDDEN JEWEL』 (表闇本文サンプル)



 今僕の目の前には、豪奢なカーテンが掛けられた窓が見える。大きさは
 ・・・そう、人の背丈より少し大きいくらいだ。
 もう日付が変わる頃なのだが、どうやら部屋の主はまだ起きているらしい。
 黒い上質のカーテンから、煌々と明かりが漏れてこちらを照らしている。
 庭に身を潜ませ闇夜に溶け込んだ僕は、小さくため息をついた。




            (中略)




 キシッ
 
 それは本当に些細な音だったけれど・・・・
 今まで熟睡していたと思っていたベッドの中の人物が飛び起きる。まるで
 猫かなんかみたいにすばやく僕と反対側に飛び降りた。
 僕はといえば、彼女が飛び出した余波を食らって見事にしりもちをついて
 しまう。そのうえふわふわした掛け布団を頭からかぶってしまって、情け
 ないことこの上ない。





            (中略)





 「・・・・や、やばい、ねぇ」
 冷や汗をかきながら顔を引きつらせると、隣にしゃがみこんだお嬢様がうな
 ずきながらニッと笑った。しゃがんだことでかすかな星明りの中に照らし出
 された彼女の顔は、たしかに思わず見とれてしまうくらい綺麗だったけれど、
 年頃の女の子とは雰囲気が違う。
 強いて言うなら、もっと中性的な感じだ。
 それに、鋭い光を持った瞳とあの余裕の笑い方・・・自信たっぷりな感じが、
 まるで男の子のようで・・・・・
 「はは・・・そんなバカな」
 思わずそう思ってから僕は苦笑した。僕の調べた限り、この屋敷には一人娘
 しかいないはずだ。そう、十八歳の女の子だけ・・・のはず・・・・・










inserted by FC2 system